ZIPANG-5 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その24)箱根~山姥に育てられた坂田金時~【寄稿文】廣谷知行

地蔵堂にある山姥の像


箱根の大涌谷

言わずと知れた観光地、箱根

神奈川県の箱根は、芦ノ湖や大涌谷などの雄大な景色のなか温泉地が多数点在する、日本有数の自然観光スポットです。晴れればその自然に抱かれながら富士山の壮大な姿を眺めることができます。


そんな箱根の山々のなかに足柄山とも呼ばれる金時山があります。この山は、あの有名な童話の主人公、金太郎の育った山とされています。金太郎は後に平安中期に数々の妖怪退治をした源頼光四天王の一人、坂田金時として活躍するのですが、その幼少期は金時山で山姥に育てられたと伝えられています。


自然湧出する姥子温泉の写真


姥子温泉 秀明館


姥子温泉の秀明館

数ある箱根温泉のひとつに姥子温泉があります。注連縄の張られた岩から染み出る幽玄な温泉は湯量が定まらず、冬には枯渇してしまうという、レアな温泉です。普段は自然湧出する源泉100%なのですが、枯渇しているときは汲み上げた温泉になるか、休館となってしまいます。


また、宿泊はできず、日中のみの営業となっており、さらに湯治目的の施設ですので会議、宴会、写真撮影などは禁止です。


その静かに深山の奥に佇む趣のある温泉施設として、夏目漱石や田山花袋などの文人も訪れたらしく、その作品のなかにこの温泉の記述が見られます。有名な『我輩は猫である』のなかにも、登場人物の思い出話でこの温泉のことが語られています。


金太郎が枯枝で目を突いてしまった時、山姥が治るように祈ると、夢のなかに山の向こうに目に効く温泉があるというお告げあり、その温泉を探して湯治させたところ、みるみるうちに快癒したという伝説があります。その温泉が姥子温泉であり、その名の由来もこの伝説がもとであるとされます。


また、別の伝説として三日ほど山から金太郎が帰ってこないことを嘆いた山姥が、心配で泣き続け、目を悪くしてしまったので、金太郎がこの温泉で湯治させて治したという話もあるようです。


姥子温泉は昔から眼病に効くとされ、目を温泉で洗うと良いとされていますので、このような伝説が生まれたのかと思われます。

薬師堂・地蔵堂のほか石仏群がまとまってあります

 

薬師堂の薬師如来 


地蔵堂

秀明館の敷地には、薬師堂と地蔵堂があり、伝説にちなんでか地蔵堂の方に金太郎を育てた山姥の石像があります。ちなみに薬師堂の如来像は鎌倉時代の作と伝えられ、非常に古い石仏とされています。


地蔵堂の方にある金太郎を育てた山姥の石像


山姥も姥神像?

この姥像、もちろん金太郎を育てた母、山姥の像とされていますが、その姿は大きく見開いた目に口を開け、はだけた胸からあばら骨と垂れた乳をあらわにし、片膝を立てて座るといったまさしく姥神像の姿をしています。


すべての姥神の元になったと思われる立山の姥神、おんば様も、もともとは山の神、つまり山姥だったと考えられますし、同様の姿をしていることから、姥子温泉の山姥像もこれまで見てきた姥神像とルーツは同じなのかもしれません。



続く・・・



寄稿文
廣谷知行(ひろたに ともゆき)
姥神信仰研究家



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発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)



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ZIPANG-5 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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