小田原城天守閣〈 1.工匠の近世と近代 〉参考
難攻不落の城として知られる小田原城。城内では歴史を学べる展示のほか、天守閣の展望デッキからは絶景が広がります。2019年4月にリニューアルオープンした小田原城NINJA館(歴史見聞館)も忍者体験が楽しめるスポットとして人気です。
東本願寺御影堂〈 2.技能の継承 〉参考
真宗本廟東本願寺は、京都市街に壮大な伽藍を構える本山寺院であります。
現在の伽藍は元治元年(1864)の焼失後、幕末から昭和にかけて順次再興されました。
御影堂は明治28年の建立で、20世紀中葉以来の規模と形式を継承しており、我が国最大の平面規模をもつ雄壮な伝統木造建築です。
御影堂と並立して両堂形式を構成する阿弥陀堂は,格式高く荘厳な内部空間を備えています。
両堂の前には烏丸通に面してそれぞれ門を開き、御影堂門は我が国最大級の二重門になります。比類ない規模と高い格式を備えた近代の木造寺院建築であります。
太宰治記念館「斜陽館」(太宰治 生家)参考
第五十九銀行(後半でご紹介)を設計した堀江佐吉氏による設計です。
青森県五所川原市
明治の大地主、津島源右衛門(太宰治の父)が建築した入母屋造りの建物で、明治40年6月に落成しました。米蔵にいたるまでヒバを使い、階下11室278坪、2階8室116坪、付属建物や泉水を配した庭園など合わせて宅地約680坪の豪邸です。
戦後になってから津島家が手放し、昭和25年から旅館「斜陽館」として町の観光名所となり、全国から多くのファンが訪れていましたが、平成8年3月に旧金木町が買い取り、当時の様子を復元し、現在の記念館となりました。
太宰治の面影を訪ねて…信濃~津軽へ
下記のリンク記事にてご紹介しています!
ZIPANG-4 TOKIO 2020大正十五年創業の古き良き宿の魂とは「全ての人に深き癒やしと一杯の楽しさを!」(その3)
https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7867960/
工匠と近代化―大工技術の継承と展開―
開催概要
会場 国立近現代建築資料館 東京都文京区湯島4-6-15 湯島地方合同庁舎内
会期 現在開催中~2021年2月21日(日)
開館時間 午前10時~午後4時30分
入館料 無料
国立近現代建築資料館では、東京国立博物館の「古代から近世、日本建築の成り立ち」と国立科学博物館の「近代の日本、様式と技術の多様化」(終了)をつなぐものとして、大工技術を中心とした工匠の近代化についてご紹介します。
明治維新による近代化は、建築の西洋化とほぼ同じ意味を持ち、教育機関による「建築家」の養成、従来の棟梁や大工集団といった生産組織の再編によって建築の近代化が進められました。
庁舎、学校、銀行といった近代に誕生した施設のみならず、寺院や住宅においても、従来の工匠技術を用いた洋風の模倣から様式主義的なもの、実利性を追求したものなど、技術の発達とともに多様な近代化が図られました。
また、ユネスコ無形遺産として「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が審議・決定されることにちなみ、近代に継承された大工技術に係る図面、模型及び大工道具などをご紹介します。
また、木造建築を受け継ぐための伝承者養成・技能錬磨・原材料や用具の確保など、近年の取組みについてもご紹介します。
〈 1.工匠の近世と近代 〉
近代における工匠はどこから来て、どんな技術を有していたのでしょうか?
我が国では、図面や模型をもとに建物を建てるという流れが中世の頃には確立していたと言われています。
近代以前においては、立面図に相当する「建地割」などが高い作図技法と描法によって作成され、それらを作図する者と現場の棟梁や大工を含めて工匠と称しています。ここでは、模型、図面、技術書などの展示によって、近代に繋がる近世の作図技術をご紹介します。
小田原城 天守模型
江戸時代 大久保神社蔵 (小田原城天守閣寄託)
(原建物:江戸時代)
細部を丁寧に加工していることから、製作当初から「見せる」ことを意識していたことがうかがえます。
〈 2.技能の継承 〉
幕府・諸藩等に仕えていた大工家や棟梁らは、庁舎や学校といった新しい機能を持つ施設の建設需要に合わせ、新しい材料や構造の導入など様々な手法で西洋建築の手法を吸収し、擬洋風や和洋折衷などの様式を生み出してきました。
こうした独自の西洋化は、それを担う工匠に確かな伝統技能が備わっていたことのあらわれであり、近世から継承された工匠の技術が建築現場において重要であることが改めて認識され、工匠自らが技術書を編纂したり、学校教育の場で日本建築史や伝統技法を教授することで、その継承に努めてきました。
ここでは、京都東本願寺の再建で活躍した富山の工匠岩城家文書、伝統技法を学ぶための教本などを展示し、近代における日本建築の技能継承についてご紹介します。
東本願寺御影堂立面兼断面図
1890年代 滑川市立博物館蔵
(原建物:明治時代 / 重要文化財)
わが国最大の平面規模をもつ伝統木造建築です。屋根瓦17万5千枚、畳927枚という数からその大きさを実感できますね。
〈 3.在野の大工 〉
東京や大阪といった都市とは異なり、建築家の指導を得られる機会が少なかった地方では、主に近世から地域で活躍していた大工家の棟梁がその役割を担います。
彼等は近世から近代にかけての工匠技術を継承した伝統的な建築を建設する一方で、いわゆる擬洋風建築の役所や学校建築にも取り組みました。
こうした地方における在野の大工が洋風建築の要素を取り入れる試みは、各地に残る大工文書から地方色とともに読み取ることができるのです。
ここでは、愛媛県高松の大工久保田家、岐阜県揖斐川の大工内田仙司が残した図面などから洋風意匠・技術の導入に試行錯誤した様子をご紹介します。
岩城庄之丈製図道具
明治時代 滑川市立博物館蔵
近世以前は筆や角筆を用いて描画し、曲線は薄板を小鉋で削った型板を用いました。
〈 4.新たなる挑戦 〉
近世以前の大工家や棟梁は、今でいうところの設計・設計監理を担当する大工頭や御大工、現場で施工を担当する大工組や棟梁に大別され、家格によって職能が限定されていました。
明治時代以降、これら多くの大工家や棟梁は、請負会社として組織化し、学校教育を受けた建築家を取り込むなどして、設計と施工を一式で請負う業態が誕生し、現在における建設会社の原形となります。
ここでは、清水組、堀江組など規模の異なる工匠家について、高い技能が反映された請負業務の例を紹介します。
五十九銀行新築正面之図
1900年頃 青森銀行本店蔵
(原建物:明治時代 / 重要文化財)
太宰治の生家「斜陽館」を設計した堀江佐吉氏による設計です。
旧第五十九銀行本店本館(青森銀行記念館)外観 参考
旧第五十九銀行本店本館(青森銀行記念館)内観 参考
〈 5.伝統技術の記録と再興 〉
明治政府による古社寺建造物の調査と保存修理にあたっては、詳細な実測図が作成され、それが学術と結びつき、建築史研究の基盤が整備されました。そして古代建築の知見と京都の建築技術を集積し、平安神宮が誕生します。
近代的な建築手法の体得によって、これまでの伝統様式や技法と隔絶するのではなく、融合によって伝統様式や技法を生かし、後世に継承されるよう、多くの建築家が取組み、成果を上げてきました。
ここでは、実測図の好例「国宝・重要文化財建造物保存図」や平安神宮の図面展示によって、工匠としての建築家が伝統様式や技法を継承するために寄与した例を紹介します。
平安神宮蒼龍楼・白虎楼立面図
1890年代 平安神宮蔵(京都国立近代美術館寄託)
(原建物:明治時代 / 重要文化財)
平安遷都1100年を記念し、市民の総社として創建されました。古代を指向した独特の意匠が絵にも表れています。
平安神宮 蒼龍楼 参考
平安神宮 白虎楼 参考
平安神宮の建築は、明治28年、平安遷都千百年紀念祭・第6回内国勧業博覧会の会場施設として平安宮大極殿院を模して計画され、並行して背後に桓武天皇を祀る本殿が建てられ、竣工とともに神社施設とされました。
全国からの募金により建設され、設計は宮内省技師木子清敬及び帝国大学大学院生伊東忠太、施工は清水組。
平安神宮の建築は、古代建築の知見と京都の建築技術を集積し、古代を指向した独特の建築空間を形成し、高い意匠的価値が認められます。また、京都の建築的伝統を支えた事業のひとつとして、歴史的にも重要であります。
次号は、
「飛騨の匠の足跡、匠の技術、匠の道具」についてご紹介いたします。
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使
協力(順不同・敬称略)
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