ZIPANG-5 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その27)~ 吉祥寺のみそなめ地蔵 ~【寄稿文】廣谷知行

吉祥寺山門


群馬県の花寺・吉祥寺

群馬県に関東好きな道の駅第1位に選ばれた田園プラザがある川場村があり、この村に臨済宗青龍山吉祥寺があります。暦応2(1339)年に創建された歴史のある寺院です。

境内には山門はもちろん多くの建造物のほか、県指定文化財となっている本尊の木造釈迦如来坐像のほか、十六羅漢像など多数の仏像があり、見ごたえのある寺院となっています。
また、花寺とも呼ばれ、一年を通して様々な花が咲き誇る寺として有名です。


吉祥寺参道


吉祥寺みそなめ由来書き


みそなめ地蔵

その吉祥寺の参道にみそなめ地蔵と呼ばれる石像があります。が、よく見ると閻魔像と奪衣婆像ではないですか。


全国にみそなめ地蔵と呼ばれる信仰は、山梨県甲府市の一蓮寺や、奈良県大和郡山市の矢田寺などいくつかあるのですが、どこも地蔵尊に、体の悪い箇所が治るようにと、その場所にみそを塗って願をかけるというものです。ちなみに、似たようなものに塩なめ地蔵というものも全国にありますが、こちらも地蔵尊がほとんどで、塩をかけたり、供えたりして願をかける信仰になります。


みそなめ地蔵には昔語りなどで有名な伝承があり、味噌がうまく作れない嫁が地蔵に願掛けをし、お告げにより口にみそ塗ったらおいしいみそが作れるようになる、といった内容です。


しかしながら群馬県では、みそなめ地蔵信仰がみそなめじじい又はみそなめじいさん、みそなめばばあ又はみそなめばあさんとも呼ばれ、奪衣婆像などにみそを塗る風習があります。


吉祥寺みそなめじいさん


吉祥寺みそなめばあさん


群馬県では、閻魔像と奪衣婆像をセットで寺院や墓地の入り口などに祀ることが多く、その風習とみそなめ地蔵の信仰が習合し、みそなめじじい、みそなめばばあといった群馬県独特の信仰が生まれたのかと考えられます。


天桂寺みそなめ地蔵


吉祥寺の他にも

群馬県沼田市に曹洞宗月宮山天桂寺があり、この寺院も応永元(1394)年創建と、吉祥寺と同じように長い歴史を持っています。そしてここにもみそなめ地蔵として、奪衣婆、懸衣翁の像が祀られています。



また、同県の片品村にある姥神像(ここには対になる閻魔像などはありません。)にも、口のまわりにみそが塗られてあり、これもみそなめ地蔵の風習があるのだと思われます。


いくつかみそなめじじい、みそなめばばあの例を見てみましたが、どれも、もともとは奪衣婆や閻魔、懸衣翁であり、それらが墓地の入り口などに祀られていることは、この世とあの世の境界のしるしとして祀ったと考えられ、これは境界を司る姥神の祀り方と共通しています。


時代が下り、奪衣婆としての認知度が高くなった状況により、姥神を奪衣婆として閻魔様と一緒に、しかしながら姥神信仰の性質を引き継いで境界に祀るようになったのかと思われ、さらにそれが味噌なめ地蔵の信仰と習合していったものと考えられます。


次回に続く・・・


寄稿文
廣谷知行(ひろたに ともゆき)
姥神信仰研究家



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2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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