墨会館 ピロティ
公民館と生涯学習センターをつなぐ車寄せの役割であり、中央部分には明かり取りがあります。 また、中庭側のテラコッタ製の壁も明かり取りと風通しの役割をしています。
1926年、ル・コルビュジェは、ピロティを近代建築の五原則の一つに挙げています。
ル・コルビュジェとピエール・ジャンヌレが提唱した五原則の残り四つとは?
「屋上庭園、自由な平面、自由な立面、連続水平窓」です・・・
丹下健三は師匠の前川國男(一時期、パリのル・コルビジェのオフィスで建築設計の仕事をしていた。)を通して、ル・コルビジェの多大な影響を受けていたことを感じさせます。
墨会館(すみかいかん)について
墨会館は、丹下健三氏の設計により昭和32年に完成した建物です。
高い壁に囲まれた外観
毛織物産業の工場地帯であったので、騒音対策として建物全体が壁で囲まれています。 外部に面した壁は、窓を少なくしたため、暗くなる建物内部への明り取りには様々な工夫が施されています。
建物は、鉄筋コンクリート造平屋一部2階建で、敷地面積3398.82㎡、建築面積2209.93㎡、延床面積2525.14㎡(建築基準法上)、台形敷地北辺の2階事務所棟と南半の平屋ホール棟が玄関車寄せで接続されており、1階外壁は非構造体で上端にスリットを入れて採光としています。
ダブルビームの大梁、打放しのコンクリート等、丹下健三氏の初期の作品の特徴をうかがうことができます。
丹下健三は同時期に、香川県庁舎や倉吉市庁舎を設計していますが、此処も同様な空間の特徴を示しています。
閉鎖的な外部に対して、開放的な内部空間、 あくまで伝統を重んじたコンクリート構造表現を追求した手法は、建築家・丹下健三の初期における代表的建築のひとつと言えるでしょう。
集会室
とくに建物の柱、壁はコンクリートのままで、よく見るとそこには木の木目、節のあとが綺麗に出されていますね…
この木は何だろう?と興味がわき調べたところ…
当時、国内では、ラワン合板のコンパネはあまり使用していない時代だったので候補から外す…ところが我が国最古で、名古屋発刊の木材新聞・日本林業経済新聞社 橋爪編集長によると昭和25年6月から3年間余り続いた朝鮮戦争の折に、名古屋の旧東洋プライウッド(現・住友林業クレスト株式会社)や静岡県清水の旧・野田合板(現・株式会社ノダ)が、戦車の下に敷くために輸出した記録が見つかったと連絡あり…。
それでも節があるとのことから、やはりラワン材ではなさそうだ…それならば、(今振り返ると、当時超廉価で売買されていた)きっと北海道材の広葉樹(ハードウッド)セン・カバの型枠に間違いないと確信。
針葉樹の杉(ソフトウッド)は柔らかいし…(しかし入手はし易い)、あと、考えられるのは米松合板だが、アメリカからの本格入荷は、昭和30年代末位からだ・・・。これも違う!
やはり、北海道材しかないと、結論付けましたが、「はっきりした木目と節」に一抹の不安を感じながら・・・
アップロード前に、念のため墨会館の資料を再読したところ、小生の大間違いで、正解は
「杉」だったのでした!・・・ガックリ‼
『下手の考え休むに似たり』
とはこういう事だったのかと、身をもって体験した次第です…
このため、木型は寸分の狂いもなく正確につくられ、コンクリートの流し込みも途中で切らすことなく一気に行なうという難しい工法がとられました。
平成20年7月8日に登録有形文化財の登録を経て一宮市が取得するまで、艶金興業の本社として利用されており、あくまで一般的な改修と補修工事を経てきましたが、竣工後60年以上が経過しており建物を保存・活用していくために老朽化への対応が必要不可欠となってきました。
また、墨会館のある小信中島地区には公民館活動の拠点となる施設が無く、公民館の設置が強く望まれていたことから、建築文化財としての価値の保存、建物の機能の再生・転用を図ることを目的に改修が行われました。
平成26年11月からは、地域のランドマーク・街づくりの核となる「小信中島公民館」「尾西生涯学習センター墨会館」として地域の皆さんに利用されています。
墨会館は、わが国建築史に大きな足跡を残し、現代建築に多大な影響を与えた丹下健三氏の作品としては、愛知県内で唯一の貴重な建物です。
名称の由来
墨会館の名称の由来は、建物が艶金興業という繊維関係の会社の本社事務所として建設されてから長年使用されており、社長の名字が墨さんであったことから「墨会館」と呼ばれています。
丹下健三氏が設計された経緯
約60年前、艶金興業の本社事務所の建設に際し、社長が雑誌で見た「コンクリート打放し」の旧東京都庁(有楽町)の建物を気に入り、設計者の丹下健三氏に設計を依頼することとなりました。最初は断られましたが、粘り強く交渉して実現しました。
写真は、建設当時の 設計図面を保管されている資料室です。
墨会館・小信中島公民館
施設紹介
小信中島公民館には、「中会議室」「小会議室」 「研修室」 「調理実習室」「和室」「自習室」「資料室」があり、「公民館事業」「 文化・芸能の定期利用団体」「地域づくり協議会や児童育成協議会など地域の各種団体」に利用されています。
平面図
ピロティ
建物中央部にある鉄格子扉内側のスペースは、 「ピロティ」(柱だけの空間)になっており、 集会室棟と公民館棟、二つの建物の車寄せの役割をしています。
中庭との壁面は、建物北側壁面と同じテラコッタ(陶器)製になっており、明かり取りと風通しの役割をしています。
改修工事でのピロティの耐震強化対策では、4本の柱の コンクリートを打ち直し、建設当時より片側5cm(計10cm)太くしてあります。
鉄格子扉をそのまま生かすことで、建設当時の姿が残るように改修されました。
建物の内部について
玄関ロビー
吹き抜けになっており、2階全体をガラス窓にしてあるため、明るいロビーになっています。
雛人形や鎧兜など季節ごとの飾り付けもしています! メダカもいるよ!
清き水にしか住めないというメダカ、最近はとんと見なくなりました。メダカの住める世界に…
玄関ロビーのタイル
ロビー壁面は、 テラコッタと同じ「信楽焼」 のタイル壁になっています。
特注品で、色あいと手作り感のある風情が人気となっています。室内にタイル壁を設置したことは当時では珍しかったそうです。
欄間風の板ガラス
各部屋を仕切る壁面上部には、欄間様式の透明の「板ガラス」が使用されています。
室内には、和の様式が取り入れられており、洋風な外観とは、異なった趣になっています。
中会議室
多人数の会議や体操、ダンス、ヨガなどの運動にも利用されています。(定員90人)
小会議室
少人数での会議や民謡、合唱などの団体に利用されています。
壁上部はスリットガラス、小窓、天窓があり明かりを取り入れるようになっています。(定員18人)
研修室
洗い場があるため書道、絵画などの団体に利用されています。(定員30名)
調理実習室
オーブンレンジ付の講師用の調理台1台と参加者用の調理台4台があります。
炊飯器や発酵器など一通りの調理器具も備えています。(定員30名)
和室
8畳2室の和室になっています。
炉が設けてあり茶道の団体などに利用されています。(定員32名)
自習室
中高生が学習のために利用しています。
利用時間は、土日祝、春休み、夏休み、冬休みの午前9時~午後6時までです。(定員18名)
ホワイエ(廊下)
廊下は広く南側は中庭に面した全面ガラスで、日よけに和の要素を取り入れた雪見障子を採用しています。
応接セット
ロビーにある椅子と机は、天童木工製で、艶金工業で使用されていた物のレプリカです。
集会室棟玄関ロビー
入口正面には、公民館棟ロビーと色が異なる「タイル壁」になっています。 集会室は不特定多数が使用するため、不燃化等の改修を行っていますが、天井の木製桟や壁・扉類は、薬剤を浸透させて不燃化を図り、昔の雰囲気をできるだけ残すようにしてあります。
集会室
コンクリート造りの特徴として、手をたたくと音が残ります。
この残響が良いと、利用される方もいます。
集会室棟天窓
高い塀に囲まれているため、天窓(トップライト)や壁壁面上段部に「小窓」を設け、明りが室内に届くよう工夫がされています。
丹下健三氏は60年前に、この 集会室で3つの電動装置を取り入れました。
① 正面スクリーンの屏風に似た折りたたみ壁は、開閉を電動化にしました。
② 右手の中間壁は、重い木造であったため、開閉をギアとチェーンの電動化にしました。
③ 天井照明は、 用途に合わせて照明の高さを変えられるよう電動化にしました。
正面スクリーンは「屏風」形式になっており、ここにも和の要素が取り込まれています。
2階外観
2階会長室
2階には、会長室、社長室、会議室があります。 床は、絨毯張りになっており、洋風な外観からは想像できない、和風の造り付けの家具や棚が設けられています。
2階テラス
ここからは、墨会館の周辺の景色と中庭全体が眺められます。
手すり(正式には勾欄<こうらん>という)をはじめ、梁や柱等全てがコンクリート打放しの構造で、柱には杉板の板目や節目・釘の跡が見受けられます。
また、せり出した梁は、お寺の軒下に似ており、墨会館の特徴であるダブルビーム(二重梁)も見られます。
南方向には、集会室の屋根があり、明かり取りの丸いトップライトが印象的です。
中庭
二つの建物の間には、芝生の広い中庭があります。
昔は、ガーデンパーティーが開かれていました。
名称の由来
墨会館の名称の由来は、建物が艶金興業※という繊維関係の会社の本社事務所として建設されてから長年使用されており、社長の名字が墨さんであったことから「墨会館」と呼ばれています。
※艶金興業
名前の由来
明治の初期になると、尾州(愛知県一宮市付近)の綿織物が非常に盛大になり、天下に名声を博していた。その綿織物、または絹綿交織物を石の上で砧打ち(きぬたうち)を行なうが、これを艶出しといった。
直径60cm位の花崗岩の上部を碁石のごとく中高に丸く磨きあげられた石の上に一幅の織物の畳んだものを乗せて、左手で反物の端を持ち、右手に樫製の木槌を持ち、二人の職人が差し向いで唄に合わせて拍子をとり交互に織物を打って万遍なく平均に艶を出す仕事でキラ打ちともいった。
この艶出しを業とする者を「艶屋」といった。艶金の創業者である墨宇吉は、通称金兵衛といわれ、艶屋の金兵衛で艶金と名づけられた。これが艶金の発祥となった。
昭和天皇陛下 一宮工場へ行幸を賜る
現在は、株式会社 艶金 本社にて「社宝」として大切に保管されています。
1889年(明治22年) 墨宇吉翁創業
1946年(昭和21年) 昭和天皇陛下の行幸を賜る
1980年(昭和55年) 艶金化学繊維の生産拠点を大垣工場に集約
2019年(令和元年) 脱炭素経営宣言 会社名を株式会社艶金に変更。現在に至る。
ZIPANG-5 TOKIO 2020 染色界の先端師~のこり染め~あなたはご存知でしたか ⁉
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/17644743
参考
墨会館 年間行事計画
小信中島公民館は、連区公民館長を始め計45名の役員が小信中島連区の皆様に楽しんでいただけるような各種行事を計画・開催しています。
なお、各種行事は「魅力ある地域づくり部」「家庭学習部」「成人学習部」「女性学習部」「体育レクリエーション部」の各部が中心となり開催される行事と公民館役員全員が協力して開催する行事があります。
また、公民館の行事には、協力部役員及び公民館推進委員の方々にもご協力をいただいております。
皆さんも、是非、公民館事業にご参加ください!!!!
定期利用団体
小信中島公民館では、現在33団体が定期利用団体として活動しています。
活動内容は、民謡、合唱、ヨガ、空手、ダンス、剣詩舞、楽器演奏、書道、手芸、絵画、料理、茶道など様々で、皆さん楽しく活動しています。
毎年11月に開催される「小信中島公民館文化祭」では、舞台発表や作品展示で日頃の成果を発表しています。あなたも参加してみませんか?
お問い合わせは
公民館事務室(電話 0586-62-5150)まで!!
ご注意
現在、愛知県下では政府による緊急事態宣言中であり、施設の見学は一切できません。
また、緊急事態宣言解除後におきましても、ご見学のご希望者は、必ず公民館事務所にお電話でご確認をお願いいたします。(ご予約なしに突然訪ねられましても、見学はできませんのでどうか、ご注意ください。)
速報
文化庁・文化審議会(会長 佐藤 信)は、令和3年5月21日(金)に開催された同審議会文化財分科会の審議・議決を経て、7件の建造物(新規7件)を重要文化財に指定することを文部科学大臣に答申しました。
この結果、官報告示を経て、国宝・重要文化財(建造物)は、2,530件、5,253棟(うち国宝228件、291棟を含む。)となる予定です。
祝 重要文化財新指定
ダイナミックな外観と壮大な内部空間を有する戦後建築の金字塔
代々木競技場
2棟 第一体育館 、第二体育館
所在地:東京都渋谷区
所有者:独立行政法人日本スポーツ 振興センター(写真:代々木競技場)
昭和39年の東京オリンピックを機に建築された、建築家丹下健三の代表作。
吊り構造により、屋根及び観客席を支える象徴的な外観と、中央が伸び上がる壮大な内部空間を創出する。二つの半円形をずらして
組み合わせた巴形が生む動線計画も明瞭で美しい。
当時一流の技術者を結集し、前例のな
い技法、構法を開発、駆使し、意匠、構造、機能を極めて高い水準で融合させて空前のダ
イナミックな建築を実現した。
意匠的にも技術的にも秀でた、戦後モダニズム建築として価値が高い。
○指定基準=意匠的に優秀なもの、技術的に優秀なもの
丹下健三
沿革
1961年 - 丹下健三が丹下健三・都市・建築設計研究所を開設。
1997年 - 丹下憲孝が代表取締役社長に就任。
2003年1月 - 丹下都市建築設計に改組し、丹下憲孝が代表取締役社長に就任。
2005年3月22日 - 丹下健三死去。
丹下健三建築関連情報のアーカイブ リンク記事をご覧ください。
ZIPANG-4 TOKIO 2020 春爛漫!桜巡礼 香川~小豆島~淡路島へ 丹下健三の建築に触れる!
https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/8068684/
ZIPANG TOKIO 2020「カザフスタンの首都アスタナの都市計画は名古屋出身の建築家黒川紀章氏によるものです!」 丹下健三に学ぶ!
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/1597081/
ZIPANG TOKIO 2020 「 六本木ヒルズ ・ 森美術館 15周年記念展 建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの (ⅤOL.1)」
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/4153604/
ZIPANG TOKIO 2020 「世界が魅せられた日本建築、その本質に迫る!《 森美術館 》100プロジェクト、展示総数400点を超える圧巻のスケール(ⅤOL.2)」
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/4158701/
ZIPANG-3 TOKIO 2020イベント民泊ガイドラインを改訂しました「イベント開催時に海外の人や他地域の人と交流をしてみませんか~観光庁&厚生労働省~」
※最後に丹下健三氏エピソードがあります
https://tokyo2020-3.themedia.jp/posts/6710161/
一宮近郊情報ご案内!
ZIPANG TOKIO 2020「國府宮のはだか祭(儺追神事)は毎年旧正月十三日に行われる」
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/3657947/
ZIPANG TOKIO 2020「 天下の奇祭『国府宮(こうのみや)の はだか祭』 尾張総社国府宮 」
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/1987433/
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使
協力(順不同・敬称略)
墨会館・小信中島公民館
〒494-0007 愛知県一宮市小信中島字南九反11-1 電話:0586-62-5150
一宮市役所
〒491-8501 愛知県一宮市本町2丁目5−6 電話:0586-28-8100
株式会社 艶金
〒503-0995 岐阜県大垣市十六町高畑1050 電話:0584-92-1821
文化庁
〒100-8959 東京都千代田区霞が関3丁目2番2号 電話(代表)03(5253)4111
※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。
現在、1400件余の記事掲載、下記のサイトからご覧ください。
250件ほどの記事をご覧いただけます。
ZIPANG-4 TOKIO 2020 (VOL-4)
https://tokyo2020-4.themedia.jp/
235件ほどの掲載記事をご覧いただけます。
ZIPANG-3 TOKIO 2020 (VOL-3)
https://tokyo2020-3.themedia.jp/
200件ほどの掲載記事をご覧いただけます。
ZIPANG-2 TOKIO 2020 (VOL-2)
https://tokyo2020-2.themedia.jp/
615件ほどの掲載記事をご覧いただけます。
ZIPANG TOKIO 2020 (VOL-1)
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/
最新の記事をご覧いただけます。
ZIPANG-5 TOKIO 2020 (VOL-5)
0コメント