ZIPANG-5 TOKIO 2020「南方熊楠 菌類図譜 ~その整然と混沌~」電子展示【国立科学博物舘】

ジャクソンビルの南方熊楠胸像・写真


ヤコウタケ


国立科学博物舘


国立科学博物館(館長 篠田謙一)は、所蔵する「南方熊楠菌類彩色図譜」(以下、菌類図譜)のうち、代表的なものを取り上げ、その高精細画像データと、それらを活用した電子展示を核として構成される「南方熊楠デジタルアーカイブ」を矢田部良吉デジタルアーカイブに続く第二弾として公開しました。


このデジタルアーカイブにより、自然史や民俗学など幅広い分野で活躍した南方熊楠が収集した多数の菌類標本からなる菌類図譜へのアクセスが容易となるだけでなく、熊楠による菌類の整然とした記載、果てしない菌類の多様性を前にした混乱、そして菌類図譜に反映された熊楠の半生や当時の研究の状況までをご覧いただけます。


デジタルアーカイブを通して、熊楠が作り上げた菌類図譜とは何なのか、熊楠が多くの人になぜ注目されるのかに思いをはせてみて下さい。そして、本日7月27日は、熊楠が結婚した日でもあります。
このことは、菌類図譜にも関連した記述がありますので、是非、デジタルアーカイブの中から探してみて下さい。



◆電子展示「南方熊楠 菌類図譜 ~その整然と混沌~」



南方熊楠(1867~1941)は、自然史や民俗学など幅広い分野で資料を収集した人物で、日本における環境保護運動のきっかけをつくり、「エコロジー」という言葉を広めた人物としても知られています。


熊楠は海外渡航から帰国した1901年以降、多数のきのこ標本を採集し、その標本で数千点の「南方熊楠菌類彩色図譜(以下菌類図譜)」を作成しました。


菌類図譜は、熊楠の半生における行動や指向を知る上で貴重な資料であり、日記や他の資料と相互参照・利用するためにも国立科学博物館においてデジタルアーカイブ化が進められています。


この電子展示では、多数ある菌類図譜の中から代表的なものを紹介し、熊楠が試みたきのこの多様性の理解を紹介します。


第一章 南方熊楠の生涯


1875 (明治8)年 8歳 「和漢三才図会」(105巻)、「本草綱目」、「大和本草」などを筆写。

本草綱目抜記(絵図)


本草綱目抜記(絵図)


本草綱目抜記(絵図)


1886 (明治19)年 19歳 2月予備門を退学。12月、渡米。

南方熊楠渡米前羽山繁太郎贈呈・写真


1888 (明治21)年 21歳 11月 農学校を退学、アナーバーに移り、植物の調査と観察に励む。

南方熊楠叢説第一(アメリカ時代ノート1)


1891 (明治24)年 24歳 4月 フロリダ、キューバなど各地で植物を採集。

南方熊楠 24歳

1892 (明治25)年 25歳 9月 ニューヨークからロンドンに渡る。

1893 (明治26)年 26歳 9月 大英博物館への出入りを許され、東洋関係の文物をしながら読書と抄写に励む。


1895 (明治28)年 28歳 4月 大英博物館図書室に通い、民俗学、博物学、旅行記などの筆写を開始。筆写ノート「ロンドン抜書」は帰国までに52冊となる。

ロンドン抜書・九


1897 (明治30)年 30歳 3月 大英博物館東洋図書部長ロバート・ダグラスの紹介で孫文と会う。

1900 (明治33)年 33歳 生活の窮迫から9月1日、帰国の途につく。 10月15日 神戸に上陸、弟・常楠に迎えられ、和歌山市に帰る。

1901 (明治34)年 34歳 10月 熊野入、那智山周辺の隠花植物を調査。 このころから菌類図譜の作成を1941年まで続ける。

1904 (明治37)年 37歳 9月 那智での研究生活を打ち切り、田辺へ(10月)。 


1906 (明治39)年 39歳 7月 田辺闘鶏神社宮司の四女田村松江(27歳)と結婚。このころから田辺各所の書籍や市民からの抜書「田辺抜書」を作成。

田辺抜書・二


1909 (明治42)年 42歳 神社の合祀と森林伐採に反対する意見を牟婁新報に発表。

1911 (明治44)年 44歳
3月 柳田國男より来信、以後文通を重ねる。
9月 松村任三宛書簡2通が柳田により「南方二書」として刊行され、識者に配布される。

松村任三宛・封書(南方二書の一)


1914 (大正3)年 47歳 1月 雑誌「太陽」に「虎に関する史話と伝説民族」を発表。

 腹稿(十二支考「虎」)


1921 (大正10)年 54歳 1月 自宅の柿の木より発見した変形菌を新属新種ミナカテルラ・ロンギフィラと命名したとの知らせをグリエルマ・リスターより受ける。

Minakatellalongifila粘菌図


1926 (大正15)年 59歳 11月 門人小畦四郎らと協力して変形菌標本90点を摂政宮(後の昭和天皇)に進献。

変形菌進献標本


1929 (昭和4)年 62歳 6月 南紀行幸の昭和天皇に進講し、変形菌110点を進献。

1935 (昭和10)年 68歳 12月 神島が文部省より天然記念物に指定される。

神島全景 田辺時代


1941 (昭和16)年 74歳 12月に入ると萎縮腎で臥し、やがて黄疸を併発。29日6時30分永眠



熊楠は海外渡航から帰国した1901年以降、多数のきのこ標本を採集し、その標本で数千点の「南方熊楠菌類彩色図譜(以下菌類図譜)」を作成しました。菌類図譜は、熊楠の半生における行動や指向を知る上で貴重な資料であり、日記や他の資料と相互参照・利用するためにも国立科学博物館においてデジタルアーカイブ化が進められています。


この電子展示では、多数ある菌類図譜の中から代表的なものを紹介し、熊楠が試みたきのこの多様性の理解を紹介します。  


南方熊楠※1は、多数の菌類標本を採集し、その標本をもとに数千点からなる「南方熊楠菌類彩色図譜」(以下、菌類図譜)を作成しました。菌類図譜は、熊楠の半生における行動や指向を知る上でも貴重な資料で、当館が所蔵しています。


今回は、このうち49点の菌類図譜高精細画像とその翻刻データ※2を、関連資料や、菌類の生態や多様性を紹介する高精細画像21点とともに国際標準規格であるIIIF※3の定める形式で公開しました。さらに、この公開データをもとに、熊楠による菌類多様性の理解と、熊楠の半生を紹介する電子展示も制作しました。


この電子展示では、熊楠が残した資料の代表とも言える菌類図譜の高精細画像、記載内容の翻刻だけでなく、専門家によるコメントを閲覧いただき、資料とその意義を見ていただけます。熊楠の半生については、当館所蔵の資料だけでなく、南方熊楠顕彰館所蔵の資料も用いて浮き彫りにしています。また、残りの菌類図譜についても、現在、データベース化を進めています。


※1 南方熊楠(1867年生まれ、1941年没)は、多様な対象を探求した研究者として紹介されてきました。しかし、近年では、特に自然史や民俗学などの分野で広く資料を収集し、蓄積し、まとめ上げてきた実績がより評価されています。


※2 翻刻(ほんこく)とは、古典籍や古文書などに記されたくずし字を読み、現代の文字に変換する作業です。


※3 IIIFとは、International Image Interoperability Frameworkの略称で、さまざまな資料保存機関が公開するインターネット上の画像を共通の方法で閲覧・利用可能にするといった国際的なコミュニティ活動をおこなっています。画像へのアクセス方法の標準化や、画像を束ねた資料構造などの標準化を進めており、これにより画像引用などの相互利用性(interoperability)が大幅に向上します。


今回公開するデジタルアーカイブは、南方熊楠に関連する資料をIIIFの定める形式に整理した科博IIIFデータセットと、それを核として制作された電子展示「南方熊楠 菌類図譜 ~その整然と混沌~」で構成されています。


この二つは、個々の資料の画像と情報をユーザーが広く利用可能な形式で提供する一方で、それらの中からピックアップした資料を意味のある順序で並べ、専門家の解説とともに閲覧できる仕組みを提供すものです。これによって、資料を解釈する入り口としての展示と、その後の利用のためのデータセットの両方を、幅広く活用していただけます。


今後も、国立科学博物館は新たなデジアルアーカイブの構築とそれを利用した研究や展示手法の可能性について、さらに検討してまいります。


◆南方熊楠菌類彩色図譜の一例 採集者は熊楠夫人と記載



【電子展示・データセット作成】
独立行政法人国立科学博物館 植物研究部 部長
細矢 剛(ほそや つよし)



鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使



協力(順不同・敬称略)

独立行政法人国立科学博物館
〒110-8718 東京都台東区上野公園7−20電話: 050-5541-8600

文化庁 〒100-8959 東京都千代田区霞が関3丁目2番2号 電話:03(5253)4111



※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。



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ZIPANG-4 TOKIO 2020 (VOL-4)

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ZIPANG-5 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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