ZIPANG-5 TOKIO 2020「タイのベニガオザルの赤ちゃんに学ぶ」 アフター・ウイズ・コロナの未来 −1 ・・・【寄稿文】林 英光

ベニガオザルのこども 毛の真っ白な 生後1ヶ月ほどの赤ちゃん


新コロナのもたらしたこの度の災禍は、過剰な物質文明に生きる人類にとって大きな転換期になる。その絶好の模範例は、なんとタイの熱帯雨林のジャンングルに住むベニガオザルの社会にあった。


それは豊田 有 中部大学創発学術院ドクターの衝撃的な研究成果で、ワイルドライフの番組の「タイ熱帯雨林のサルの赤ちゃんが平和を築く」で偶然見ることができた。


なんと、そこには筆者が考えるアフター・ウイズ・コロナの、人間世界の大切な基本が、そのままベニガオザルの社会に存在していたのであった。


自然界の色彩はそれぞれ風土と進化の過程で獲得したもので、ベニ ガオザルの紅色も白い赤ちゃん猿の色も、種の保存・安全・機能な どの理由がある。だが人間だけは裸で生まれ、生涯自ら色彩を選択 する運命にあるのは不思議である。


筆者の所属する日本色彩学会の研究会の一つ「美しい日本の色彩環 境を創る研究会」では新たな活動を進めているが、基本は自然に近 い磨かれた伝統的な色彩が環境と肌の色に調和する。


人にとって幸 せとは調和である。それを人間活動の80%を占める人の視覚・光・ 色彩から解きあかすには自然の摂理に従うことにある。


現在人間世界には人と人を取り巻く環境、つまり人と人の関係の感情、様々な人工と自然の織り成す複雑で膨大な環境がある。それらをまとめ総合化する責任と手立ては、地上に溢れる色彩にあると考えている。


その原点は宇宙の摂理に従い進化した究極の、とても簡素・シンプルなところに行き着く筈である。


「赤ちゃんは宝である」


先ず第1に、赤ちゃんをまるで宝物のように大切にし、子供達をも分け隔てなく皆で面倒を見る。そして大人同士もさりげなく助け合う共助の社会である。
それは久しく戦後75年余り私たち日本人が忘れかけていたものでもある。


こどもを介した社会交渉の様子 オトナのオス(左)がこどもを抱き寄せている


彼らの社会は逝きし世の日本の社会のように、何のことはない自然環境に従い、分け隔てのない思いやりと触れ合いの共助の日常であり、そのDNAは生まれてまだ日の浅い白い毛の赤ちゃん達の自然な行動にも表れていた。


ベニガオザルの母親が、双子の赤ちゃんを抱いている。後ろから同じ集団のメンバーが歩いてくる。霊長類において双子はとても珍しい、またこの双子は父親が異なる


研究者 豊田有ドクターとベニガオザルとの距離でその親しい関係がわかる


子持ちの母親の集まり ベニガオザルのメスはこどもが生まれると群れの中心に寄り集まる傾向がある


「ベニガオザルの赤ちゃんの大切な役割」


ある時珍しく勃発したリーダー猿達の大喧嘩のただ中に、まだ毛色の白い子供がすっと何気なく脚元に近づくと、その触覚に獰猛な形相の雄猿達がふと動きを止め、他のオス達にも小猿が一人二人と側に行き、あっという間に穏やかな雰囲気が漂い大喧嘩は治った。


何と言う絶妙な行動であることか。有史以前は世界中でこのようなことは人も日常茶飯事であったことだろう。


人間世界では北欧の16歳の少女が、世界のリーダー達に気候変動に対応すべき意見を投げかけたが体良く無視された。


そして天空海大地の汚染の進行も、地球規模の気候変動も、悲惨な国や民族や格差による紛争も相変わらず続いている。


これが人間世界の現状である。



竹の実をせっせと拾って食べている母親の上に乗って遊ぶこどもの様子


人も三つ子の魂百までを、大人が日常的に政治や様々な場面で子供達に手本を示すことが大事である。環境が人をつくる。


そしてまた大人は子に教えられる、このようなことがある差別のない社会は、人間社会でも同様に、あるべき最も大事な互の信頼関係と共同生活の基本要素である。


わが国における地域社会と大家族の相互助け合いは、今でもこのベ ニガオザルのような、貴重な絆の続いている家族や集落は各地に存在する。


戦後少しの間は全国で保たれていたが、産業や社会環境の 急激の変化で核家族や一人世帯が増加し、福祉社会として続けられてはいるが、大切な人同士の共同意識はかなり希薄になった。


「心の基本を取り戻す」


この度の新コロナの災禍は物質文明を根底から見直す時である。AIや機械文明は人や環境との間に立って、素朴な生き物としての原点を大切に支えるものであってこそ、アフター・ウイズ・コロナの未来文明が出来ることだろう。


人の一生にも自然にも喜怒哀楽があり、いずれも宇宙の法則のなせる技は全て美しい。人のなせる物的世界にも、心の世界にも喜怒哀楽があり、風景も楽しく喜びの美もあれば、哀しく怒れる美もある。


その宇宙の摂理である混沌の中から人は一時の幸せを感じとる。そのような日常環境をより多く保全し改善し、つくって行こうとするのが環境デザインであり、自然と人と物とを景観として融和させるのは人の心にある。


「麒麟の現れる国を目指そう」


この度出あったベニガオザルの話は、今後の人類の生き方の根本である自然の摂理であり、AIと心理学の目指すべき未来社会の、介護や自動運転やロボット等の対人ソフトなど、多くの分野に共通する 基礎研究課題である。


環境の形・色・手触り・臭い、音など五感は、 生き物全ての永遠の根本であり、これを粗略にせず、美しき文化と平和で幸せな、伝説の麒麟の現れる国を目指したい。



【写真提供・キャプション】豊田 有(中部大学創発学術院)

【寄稿文】
林 英光 環境ディレクター(愛知県立芸術大学名誉教授)



続く・・・



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発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)



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ZIPANG-5 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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