ZIPANG-5 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その33)「秩父 三途婆像と姥神信仰 」・・・【寄稿文】廣谷知行


埼玉県秩父市


秩父神社


埼玉県で一番広い面積を持つ秩父市は、秩父地方の中心として、街の中心部にこの地方の総鎮守となる秩父神社があります。八意思兼命(ヤゴコロオモイカネノミコト)、知知夫彦命(チチブヒコノミコト)、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)、秩父宮雍仁親王(チチブノミヤヤスヒトシンノウ)の四柱を祀り、思兼命は学問の神であり、知知夫彦命はその子孫とされます。


なお、天之御中主神は合祀した妙見信仰の主神、秩父宮雍仁親王は、昭和天皇の弟宮様です。この神社は第十代崇神天皇の時代に創建されたとされ、延長5(927)年の『延喜式』にも記載されているなど、その歴史は非常に古く、由緒正しい神社です。


また、秩父市には羊山公園の芝桜や三十槌の氷柱などの観光名所が多々ありますが、なかでも秩父夜祭の屋台は非常に壮大で見応えがあります。この祭りは毎年12月3日に催され、日本三大曳山祭のひとつであり、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。


秩父まつり会館に展示された屋台


その屋台が、秩父神社の隣にある秩父まつり会館で秩父夜祭の概要とともに見学することができます。


 龍石寺の三途婆堂


秩父市にある飛渕山龍石寺は秩父三十四所観音霊場の札所19番であり、市の指定史跡となっています。本尊は千手観音坐像で室町時代に作られたとされています。大きな岩盤の上に建てられてあり、境内を歩くとどこも硬い岩の感触が伝わってきます。

龍石寺の三途婆堂


龍石寺の三途婆


この龍石寺に三途婆堂があり、三途婆が祀られています。三途婆とは、その名前から三途の川にいる婆ですので、奪衣婆のことで間違いないと言えます。他に閻魔堂は無く、閻魔像は隣に祀られていますが、三途婆像が中心で一番高いところに祀られています。


三途婆像と姥神信仰との関連

金昌寺の奪衣婆像


秩父市では、秩父札所四番の金昌寺で非常に作りの立派な奪衣婆の石像を見ることができます。その像は本堂の前、子育て観音像の隣にあることから、姥神の安産、子育てへの霊験に関連付けされているのかもしれません。


金昌寺の石仏群


ですが、この寺では石仏群として多くの人の手で運ばれた功徳石と呼ばれる1,300体ほどの石仏が境内に祀られていますので、そのひとつとして祀られたと見るのが自然でしょうか。


龍石寺三途婆堂にある閻魔像


しかし、先に紹介した龍石寺の三途婆堂については、閻魔像は隣にあるものの、その像についてはだいぶ朽ちてしまっていますが、目の部分に穴が開いていることから、もともと玉眼(水晶で作られた目の部分)が嵌められていたと思われます。これは三途婆像とは造りが違っていますので、どこか別に祀られていた閻魔像を関連する三途婆堂に移したのではないかと考えられます。


三途婆堂のメインが三途婆であることを考えると、その31※、32※で紹介した姥子堂や聖塚堂と同じく、この三途婆像についてももともとは、姥神として祀っていたもの、もしくは姥神信仰の影響を受けて、奪衣婆を単独で祀った可能性があると言えます。


※その31

ZIPANG-5 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その31) 群馬県甘楽町「街中に三途の川が!」【寄稿文】廣谷知行

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※その32

ZIPANG-5 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚(その32)「 奪衣婆を単独で祀るのは姥神信仰の影響か 」・・・【寄稿文】廣谷知行

 https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/20722027



次回に続く・・・



寄稿文
廣谷知行(ひろたに ともゆき)
姥神信仰研究家



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発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)



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2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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