ZIPANG-5 TOKIO 2020 守り伝えられる隠岐の歴史 ~隠岐ユネスコ世界ジオパークの魅力~(2)

ZIPANG-5 TOKIO 2020
日本海に浮かぶ宝島、隠岐4島~隠岐ユネスコ世界ジオパークの魅力~(1)

https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/20093070


後醍醐天皇肖像


隠岐ユネスコ世界ジオパーク活動の目的と魅力

隠岐の島 和ローソク 黄金色の輝き


隠岐の島 「幻想」否「現実」


隠岐の島 灯台 今日も守る「安全と伝統」を・・・


隠岐ユネスコ世界ジオパークは、「日本海の孤島が生み出した荘厳な大地と独自の生態系、そして 人の営みが織りなす景観」をテーマとしています。


このテーマを一般の方にもわかりやすく伝え、 興味を持ってもらうために隠岐ユネスコ世界ジオパークでは 3 つの要素に分けています。


(1) 隠岐諸島が形成された「大地の成り立ち」 ユーラシア大陸の縁辺であった時代から、湖の時代、海の時代、島根半島の先端の時代を経て 現在のような離島となった隠岐諸島の成り立ち。


(2) 大地の上に成り立つ「独自の生態系」 北方系、南方系、亜高山性、大陸性の植物が共存する不思議な植物分布。


(3) 古代から続く「人の営み」 約 3 万年前から石器の材料として用いられた隠岐の黒曜石を通した古代からの人の営み。 さらに、不思議な生態系や独特の歴史・文化について「地質」「地理」「地形」「歴史」「地域」「地 球」の 6 つのキーワードを用いて考えると、小さな離島に居ながらも「地球とは何か」を知ること ができる貴重な地域です。


隠岐ユネスコ世界ジオパークは、これらの貴重な地域資源を活用し、隠岐の人々が誇りと愛情をもって隠岐を語り伝えられるようになることによって、ユネスコの目的に沿う持続可能な経済活動、文化活動を推進し、隠岐地域の活性化と振興を図ることを目的とします。 



隠岐の文化を生み出したのは?

隠岐の多様な文化は、どのようにして生まれ、伝えられてきたのでしょうか。隠岐の歴史・文化の形成要因と考えられる、黒曜石、遠流の島、北前船についてご案内します。


隠岐の歴史・文化の原点

黒曜石

黒曜石製石器(宮田遺跡出土)


黒曜石は隠岐を代表する岩石の一つであり、旧石器時代から石器の材料として利用されていました。


黒曜石は産地ごとに含まれる微量成分などが違うため、化学的な分析で産地を特定できるという特徴があります。このため、黒曜石の産地は国内でも70箇所以上知られていますが、石器に利用しやすい良質な黒曜石の産地は隠岐を含めて6箇所ほどで、中国地方では唯一の産地だったことが判っています。


隠岐の黒曜石は遙か3万年前から中国地方を中心として新潟県や四国地方まで運ばれており、このことは隠岐の黒曜石が良質であったため、古代の生活には欠かせない石であったことが想像されます。


隠岐産黒曜石石器の遺跡分布


また、隠岐の黒曜石の見つかる遺跡の分布を調べていくと、当時の盛んな人と文化の交流のルートも見えてきます。黒曜石が運ばれた道は、その後の歴史でもたびたび登場する、人と文化の通り道となりました。


流人がもたらした隠岐の文化(芸能、祭り)

遠流の島

後鳥羽院(後鳥羽天皇)


延喜式(724年)に定められた遠流の地


隠岐が遠流の地と定められたのは聖武天皇の時代、神亀元年(724年)で、江戸中期になって一般の罪人が流されるようになるまでは天皇や公家、役人などの政治犯が配流となっていました。


隠岐が遠流の地となったのは、都から遠く離れているというだけでなく、島での生活に問題が少ないということもありました。流された貴人が飢えたり、生活に危険を覚えるような場所ではだめだったのです。


その点、隠岐は海に囲まれ作物豊かで既に黒曜石以来の歴史のある土地であったことが選ばれた理由になっているのでしょう。 隠岐に流された著名な人物には、鎌倉時代に権力闘争に破れた後鳥羽天皇と後醍醐天皇、そして平安時代の歌人小野篁などがいます。


隠岐の港は北前船の補給、中継基地として栄えた

北前船


隠岐は江戸時代の半ばから明治30年頃まで、北前船の寄港地として栄えました。北前船とは、大阪を出て西回りで瀬戸内から日本海を航行し、寄港する港々で商品を売り買いしながら北海道まで往復していた船の呼び名です。


北海道江差祭り特別仕立て「北前船・松寶丸」登場!


北前船が隠岐へ頻繁に寄港するようになったのは、18世紀の中頃に大阪で繊維技術が発達し、1785年に丈夫な帆が開発されてからです。それまでは、帆が弱く、強い風に耐えられなかったため、日本列島の海岸沿いを小刻みに帆走することしかできませんでした。


当時の北前船のルート

北海道函館旧相馬邸に現存する「松前屏風」。18世紀中頃の北前船寄港地松前の地割・建物・風俗の様子が描かれている。北前船で財をなした近江の豪商が描かせた。


このため、年間に大阪と北海道を1往復しか出来ませんでしたが、丈夫な帆を使用するようになってからは、下関-隠岐-佐渡という沖乗りルートとなり、風待ちや物資の補給基地として隠岐島内の各港が利用され、年間2往復が可能となりました。多い年では、年間4500隻の船が隠岐の各港に停泊し賑わいました。


隠岐の民謡の多くは北前船が運んで来た

隠岐は民謡の宝庫

毎年、5月第2土曜日 西郷港周辺で行われる「しげさ踊りパレード」


また、北前船は売り買いをする商品だけではなく、全国各地の民謡も隠岐へ運んできました。「隠岐は民謡の宝庫」とも言われていますが、中でも新潟県柏崎の盆歌が元歌となっている「隠岐しげさ節」※や、荷物の積み下ろしの時に歌われたといわれる「どっさり節」は隠岐民謡の代表格として現在も歌い継がれています。


北前船の寄港地として栄えた当時の隠岐は、情報も物も集まる先進地のひとつとなっていました。明治時代に隠岐を訪れた文人(ラフカディオ・ハーン)は西郷の食堂で洋食が出せると言われて驚いたエピソードを紀行文に綴っています。



※隠岐しげさ節全国大会

全国各地から民謡を愛する方たちが集まり、唄部門と三味線部門にわかれて隠岐しげさ節の日本一を競う大会を行います。(毎年、5月第2日曜日)


※隠岐しげさ節

隠岐は絵の島花の島 磯にゃ波の花咲く

里にゃ人情の 花が咲く

忘れしゃんすな西郷の港 港の灯影が

主さん恋しと 泣いている



隠岐の風土が生み出した人々の知恵

日本海の潮汐と船小屋

都万の船小屋と山岳信仰の高田山
船小屋は潮の満ち引きの小さい日本海側ならでは…なるほど!
一体誰が考えたのでしょうね・・・
弘法大師?山岳信仰の行者?まさか後醍醐天皇⁇ この謎が一番知りたい⁉

でもきっと、
海人たちの生活の知恵から生まれてきたものだと想う !(^^)! 古の人たちは凄い…‼

 

20棟の船小屋が整然とならび、その向こう側に山岳信仰の場所であった高田山を望む風景は静かな漁村のたたずまいを見せています。近くには松原が広がり、日本の白砂青松百選にも選定されています。


日本海と太平洋の満ち引きの違い


隠岐では普通に見られるこうした風景ですが、実は日本海の特徴が生み出した風景なのです。日本海側の海岸は、太平洋側とまったく異なっています。干潮時刻と満潮時刻が太平洋側とずれており、一日の水位差も太平洋側では2m以上もあるのに、日本海側では最大水位差が30cmくらいしかありません。

日本周辺の海底地形のモデル図


これは日本海と太平洋の間には小さな海峡しかないためです。日本海と太平洋の間を動く海水の量が制限されるために、潮の満ち引きの差が日本海側で小さくなるのです。


そして、干満の差が小さい日本海だからこそ、海から近い陸地に船を置いたままにすることができます。このような浜に面した船小屋のある風景は、日本海の小さな潮汐のたまものであるとも言えるでしょう。



次回に続く・・・



鎹八咫烏記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使



協力(順不同・敬称略)

一般社団法人 隠岐ユネスコ世界ジオパーク推進協議会
〒685-0013 島根県隠岐郡隠岐の島町中町目貫の四61番地 電話: 08512-3-1321

隠岐観光協会
〒685-0015 島根県隠岐郡隠岐の島町港町塩口24
隠岐合同庁舎別館1階 電話:08512-2-1577

隠岐の島町役場
〒685-8585 島根県隠岐郡隠岐の島町下西78番地2 電話:08512-2-2111

隠岐の島町観光協会
〒685-0013 島根県隠岐郡隠岐の島町中町目貫の四61番地 電話:08512-2-0787

後鳥羽院顕彰事業実行委員会 一般社団法人 海士町観光協会
〒684-0404 島根県隠岐郡海士町福井1365-5 電話:08514-2-0101

海士町役場
〒684-0403 島根県隠岐郡海士町海士1490 電話:08514-2-0111

公益社団法人島根県観光連盟
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 電話:0852-21-3969

島根県庁
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 電話 0852-22-5111

文部科学省
〒100-8959 東京都千代田区霞が関三丁目2番2号 電話:03-5253-4111(代表)



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ZIPANG-5 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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