群馬県みどり市
群馬県のみどり市は、同県東部に位置し、ほぼ市内全域を渡良瀬川が流れる自然豊かなまちです。平成１８（２００６）年に、同県の笠懸町、大間々町、東村の３つが合併して誕生した市です。
袈裟丸山の寝釈迦像
その自然のなか、袈裟丸山の塔ノ沢登山ルートを約１時間登ったところに、石造釈迦涅槃像、通称寝釈迦があります。この像は釈迦が入滅する様子をあらわしたもので、日本では福岡県篠栗町、南蔵院の巨大な寝仏さんが有名です。
みどり市のものは、全長約３．６メートルの石に彫られたもので、県指定史跡となっており、江戸時代後期、天明２（１７８２）年に書かれた旅行記に記されていることから、それ以前の製作と考えられています。寝釈迦像は全国各地にありますが、山奥に、石像として巨大な寝釈迦像があるのは珍しいと言えます。
草木ドライブインの寝釈迦像レプリカ
さらに、その近く、草木ダム横にある草木ドライブインには、この寝釈迦像のレプリカがあり、車で気軽に立ち寄ることができます。しかし、レプリカといっても、その姿は非常に見栄え良くデザインが変更されていますので、また違った寝釈迦像としてお参りしている気分になります。
みどり市指定文化財の奪衣婆像
観音堂
さて、前述した草木ダムの近くに、市指定重要文化財として、木造十一面観音菩薩立像があります。
観音堂の敷地にある石龕
石龕上部を開けたところ
石龕の中の奪衣婆像
そして、その像を祀っている観音堂の敷地のなかに同じく市指定重要文化財となっている奪衣婆坐像と石龕（せきがん）があります。石龕は楕円状の石を重ねたもので、窓も開いています。重さがありますが、この石をあけると中に奪衣婆像を見ることができ、非常に珍しいものと言えます。
角地蔵堂
角地蔵堂隣にある奪衣婆像
ちなみにみどり市では、深沢地区に市指定史跡となっている角地蔵があり、その横にも奪衣婆像が祀られています。
今回の姥神との関係は
さて、今回の奪衣婆像についても、近くに閻魔像はなく、単独で祀られていること、ひとつはわざわざ石龕内に収められていることなどから、その３１※、３２※で紹介したような奪衣婆と同じように姥神信仰の影響から祀られた可能性があります。
また、さらにそれぞれが本尊としての観音像や地蔵像の傍らにあったことから、立山などで見られる結界の意味で祀られたとも考えられ、この場合はまさしく姥神信仰の影響により奪衣婆が祀られたと言えます。
また、その２７※、みそなめ地蔵のときに触れましたが、群馬県では墓地の入り口に閻魔像と奪衣婆像を祀る風習があります。今回ご紹介した２つの奪衣婆について、どちらも近くに墓もいくつかありますので、その片方だけが残った場合も考えられます。そうだとしても、やはり墓地と現世の結界として祀られていますので、姥神信仰の影響があったと言えるのではないでしょうか。
次回は群馬県で多く見られる、墓地の入り口に祀られた閻魔像と奪衣婆像をいくつかご紹介したいと思います。
※その２７
ZIPANG-5 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚（その２７)
～ 吉祥寺のみそなめ地蔵 ～【寄稿文】廣谷知行
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/16055977
※その３１
ZIPANG-5 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚（その３１）
群馬県甘楽町「街中に三途の川が！」【寄稿文】廣谷知行
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/19742222
※その３２
ZIPANG-5 TOKIO 2020 全国の姥神像行脚（その３２)
「 奪衣婆を単独で祀るのは姥神信仰の影響か 」・・・【寄稿文】廣谷知行
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/20722027
次回に続く・・・
寄稿文
廣谷知行（ひろたに ともゆき）
姥神信仰研究家
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発行元責任者 鎹八咫烏（ZIPANG TOKIO 2020 編集局）
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